
仕事帰りのスーパーで、半額シールを見つけると、なんだかうれしくなります。
べつに、今日お金に困っているとか、そういうわけじゃないんですけど。でも、あのオレンジ色のシールが、好きなものの上に貼られているのを見つけたときの、ちょっとした高揚感というか、「ラッキー」って思える感覚が、わたしは好きです。
昨日は、チーズケーキでした。
いつも買うには少し高いなって思っていた、あの濃厚なやつ。それが、閉店前の値引きタイムで、半額になっていたんです。迷わず手に取りました。
「今日、いい日だったかも」
そんなふうに思えるのは、大げさかもしれません。でも、わたしはそう思いました。一日の終わりに、小さなごほうびを見つけた気分になったんです。
帰り道、買い物袋を提げながら、少しだけ足取りが軽くなっていました。寒い風が吹いていたけれど、なんだか、それさえも悪くない気がしたんです。
家に帰ったら、あのチーズケーキを食べよう。コーヒーを淹れて、ルナが隣に来たら、ちょっとだけ話しかけながら。
そんなことを考えながら、駅までの道を歩きました。
帰宅して、玄関の鍵を開けると、いつものようにルナが迎えに来てくれました。足元にすり寄ってきて、「にゃあ」って鳴きます。
「ただいま、ルナ」
そう言いながら、買い物袋を床に置いて、しゃがみこみました。ルナの頭をなでると、目を細めて、喉を鳴らします。

ルナは、わたしがスーパーの袋を開けるのが好きです。なにか面白いものが入っているんじゃないかって、いつも期待しているみたい。
今日は、チーズケーキ。
袋から取り出すと、ルナは興味深そうに鼻を近づけてきました。でも、すぐに興味を失って、部屋の隅に行ってしまいます。猫ってそういうものですよね。
わたしは、コーヒーを淹れました。いつもより丁寧に、ゆっくりと。お湯を注ぐときの香りが、部屋に広がります。
チーズケーキを小皿に載せて、フォークを添えて、テーブルに座りました。ルナは、いつの間にか戻ってきていて、椅子の下でくつろいでいます。
ひと口食べると、思っていたより、ずっと濃厚でした。口の中に、ゆっくりと広がる甘さ。コーヒーの苦さと、ちょうどいいバランスです。
「おいしいね」
ルナに話しかけました。ルナは、聞いているのかいないのか、目を細めたまま、しっぽをゆらゆらと揺らしています。
半額シールを見つけたことが、こんなにうれしいなんて。
昔のわたしだったら、そんなささやかなことに、喜びを感じるなんて思わなかったかもしれません。もっと大きなこと、もっと特別なことを求めていたような気がします。
でも、今は、こういう小さなことが、わたしを支えてくれているんだなって思います。
仕事で疲れた日も、人間関係でちょっと悩んだ日も、帰りのスーパーで半額のチーズケーキを見つけたら、「まあ、いいか」って思えるんです。
それって、とても大事なことなんじゃないかって、最近思うようになりました。
チーズケーキを食べ終えて、お皿をシンクに置きました。ルナは、まだ椅子の下にいます。
「ルナ、おやすみ」
そう言うと、ルナは「にゃあ」と小さく鳴いて、伸びをしました。
明日も、また仕事です。でも、今日みたいな小さなラッキーがあったら、きっと乗り越えられる気がします。
おやすみなさい。
あとがき
半額シールって、なんであんなにうれしいんでしょうね。得した金額より、「見つけた」っていう喜びのほうが大きい気がします。