
昨日、文具屋さんで一冊のノートを買いました。
特に理由はなくて、仕事帰りにふらっと入って、なんとなく手に取って、なんとなくレジに持っていってしまったんです。そういうことって、ありませんか。
家に帰って袋から出したとき、思った以上にかわいくて、しばらくテーブルの上で眺めていました。ルナが興味深そうに近づいてきて、においを嗅いで、それだけで去っていきました。あなたはいいな、そういう感じで生きられて、とちょっと思いました。
翌朝、つまり今朝のことなんですけど。
コーヒーを淹れて、ノートを膝の上に置いて、最初のページを開きました。
真っ白でした。当たり前なんですけど、ちょっと、息が止まりそうになりました。
ペンを持って、まず名前を書こうと思いました。表紙の裏に、自分の名前を書く。小学生のころからの習慣みたいなもので、なんとなくそうするものだと思っていたんです。
でも、ペンが止まりました。
どこに書けばいいんだろう、と。
真ん中?右下?左上?なんか、どこに書いても、いい気がしなくて。自分の名前って、こんなに書きづらいものでしたっけ、って変なことを考えながら、しばらく白いページを見つめていました。

そのとき、ルナがとことこやってきて、わたしの足の上に乗ってきました。
ノートに乗るんじゃなくて、足の上に。なんか絶妙なところに乗るんですよね、この子。
重みが膝に広がって、それだけで、さっきまでの「どこに書けばいい問題」が、どうでもよくなりました。
結局、ページの左上に小さく「mio」って書きました。全部小文字で。深く考えるのをやめた感じの書き方で。
なんで名前を書くとき、あんなに緊張するんだろうって、ちょっとだけ考えました。
きれいに書かなきゃ、とか。このノートに相応しい最初のページにしなきゃ、とか。そういうことを思っていたのかもしれないです。
新しいものって、始める前が一番重くて、一番きれいな気がします。
使ってしまったら、もうそのままで、戻れないから。
名前を書いたあと、そのページはそのままにして、ノートを閉じました。
今日は、それだけでよかった気がして。
コーヒーを飲みながら、ルナの背中を撫でていたら、窓の外でカラスが一羽、どこかへ飛んでいきました。
なんてことのない朝でした。
あとがき
名前だけ書いて、まだ2ページ目が白いです。なんか、それでいいかな、ってなってます。ルナには関係ない話ですが。