
朝、洗面所の窓から入ってくる光が、ちょっとだけ黄色くて。
蛇口をひねる音と、水がはねる音。冷たい水が頬に触れると、まだ半分眠っている頭が、すこしずつ戻ってくる感じがします。
化粧水を手のひらで温めて、鏡の前に立つ。
いつもの手順なんですけど、今朝はなんとなく、頬に触れる瞬間に「お疲れ様」って、心の中でつぶやいてしまいました。
誰に言うでもなく。誰かに聞かせるためでもなく。
ただ、昨日一日、ちゃんとここにいてくれた自分の肌に対して、そう思ったんです。
変な話なんですけどね。
肌って、わたしがちゃんと労わなくても、勝手に頑張ってくれてる気がして。日に当たったり、乾燥したり、たまに寝不足で荒れたりしても、それでも今朝もここにあって。
「今日もよろしくね」より先に、「昨日もお疲れ様」って言いたくなる朝でした。
なんでもないことなんですけどね。

そんなことを考えていたら、足元にルナが来て、洗面台の脚にごりごり頭をこすりつけてきました。
「なに、構ってほしいの」って聞いても、当然返事はなくて、ただ目を細めてこっちを見上げてくるだけ。
化粧水のふたを開けたまま、しゃがんでルナの背中を撫でると、少しだけ湿った朝の毛並みが手のひらに触れます。
ルナは、わたしが自分を労わっているのか、ただサボっているのか、たぶん気にしていません。
それでいいんだよなあ、って思いました。
鏡の前の時間、そんなに意味なんてなくてもいいのかもしれません。
肌に触れながら、今日も一日、なんとなく始まっていく。
それだけで、じゅうぶんな気がします。
じゃあ、いってきます。
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**あとがき**
鏡の前で「お疲れ様」って独り言、書きながらちょっと恥ずかしくなりました。でも、たぶんこれ、わたしだけじゃないですよね……?
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